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森田靖教授が日本化学会学術賞受賞

2016.03.28 受賞・表彰
  • ㊧日本化学会学術賞を受賞した森田靖教授

 大学応用化学科の森田靖教授(物性有機合成化学)が、日本化学会の第33回学術賞を受賞しました。会員数約3万人に及ぶ我が国を代表する学会の一つである日本化学会の各賞受賞は本学の教員として初の快挙です。中でも学術賞は、卓越した先導的・開拓的な基礎研究業績を対象としています。

 受賞対象となった森田教授の研究テーマは、「開殻有機π電子系分子およびその集合体の合成と材料応用」。分子構造的にも電子構造的にも斬新なπ電子系有機分子を設計・合成し、物性を調べ、それを基に新しい有機電子材料の開発に取り組んでいます。

 開殻有機π電子系分子は「有機ラジカル」とも呼ばれ、一般には空気中で不安定な化学種として知られています。しかし、私たちの身の回りに溢れている「閉殻有機分子」とは大きく異なる特異な電子構造を持つことから、磁性・電気電導性や光学特性など様々な機能性材料への応用が期待されています。森田教授は従来に無い斬新な分子構造を有し空気中でも高い安定性を有する有機ラジカルをこれまでに数多く設計・合成してきました。そして、溶液状態や結晶状態における特異な電子スピン構造に起因した新規な物性・機能性を創出してきました。最近では、トリオキソトリアンギュレン(TOT)と命名された有機ラジカルを独自に分子設計・合成し、それを基盤とした基礎・応用研究を進めています。

 TOTは酸化還元特性に優れ、一つの分子で複数の電子の貯蔵・放出が可能です。この有機ラジカルを正極材料に使った有機二次電池は、市販のリチウムイオン二次電池の性能を大きく上回る可能性を示し、環境への負荷が少ない非レアメタル系の次世代型二次電池として実用化の期待が高まっています。

 森田教授は独立行政法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業CRESTの研究代表者として、(株)カネカやトヨタ自動車(株)などの日本を代表する企業の研究者と共同で、この有機二次電池や有機薄膜太陽電池などへの応用研究を行っています。さらに有機ラジカルの電子スピン物性をより広い観点からとらえ、分子スピン量子コンピュータといった従来では想像できなかった新たな領域にも挑戦しています。

 今回の受賞に当たり、森田教授は「20年以上にわたる基礎研究の斬新さ、重要さを評価していただいた。もちろん私一人でできた研究でなく、一緒に頑張ってくれた院生や他大学の共同研究者に深く感謝を伝えたい。私自身が化学を楽しんでいる姿を学生に見せるのが一番の教育であると信じてきた。これからも学生とともに世界を相手に戦い、実験環境改善のお手伝いも含めて学生の教育や研究成果の発信を通して大学に恩返しをしていきたい」と喜びを語りました。

 表彰式は日本化学会の第96春季年会会期中の326日、同志社大学京田辺キャンパスで行われました。また、森田教授による受賞講演が年会初日の324日に行われました。

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