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佐藤一雄教授が精密工学会賞を受賞

2017.09.29 受賞・表彰
  • 精密工学会賞を受賞した佐藤一雄教授(左)と、精密工学会の青山藤詞郎会長

 機械学科の佐藤一雄教授が、精密工学会から学会賞を贈られました。この賞は年1回、精密工学関連分野で革新的な功績をあげた研究者・技術者各1人に贈られる最高位の賞で、今回が13回目の贈賞となります。

 佐藤教授は、日立製作所中央研究所在職中の1983年から単結晶シリコンを主材料とする微小機械電気システム(MEMS)の研究に着手し、以後、名古屋大学、愛知工業大学へと研究の場を移しながら、この分野の開拓に努めてきました。併せて、研究者の育成、著作、学会運営など幅広い活動を通じて学術・産業・教育の発展に貢献しました。

 シリコン基板上に数千個の細胞容器を形成した植物細胞融合装置の開発で1989年に精密工学会技術賞を受賞。その後も血液サラサラモニタ、加速度センサ、AFMプローブなどの微細機械デバイス構造を提案・実証してきました。これらの新しい微小機械の提案と並行して、その素材である単結晶シリコンの機械的性質の研究、ならびに、単結晶シリコンで微細な3次元形状を形成する結晶異方性エッチングの研究で、マイクロナノ機械理工学の発展に貢献しました。

 単結晶シリコン薄膜の強度、破壊特性に関する研究では、マイクロ材料試験法を新たに開発して厚さ数ミクロン以下の薄膜の引張り試験、曲げ試験を実現しました。この結果、従来、シリコンは室温付近では脆く、600℃以上ではじめて永久変形するといわれてきましたが、厚さを1ミクロン程度まで薄膜化すると500℃以下でも永久変形することを見出しました。

 シリコンの結晶異方性エッチングの研究は佐藤教授のライフワークであり、独自のデータベース、エッチングシミュレーションシステムを産業界に普及する一方、オランダ、フィンランドなどとの国際共同研究を組織してエッチングの物理化学的に解明しました。過去20年間に公表したエッチング関連の125篇の論文は合計1700回以上引用されています(Web of Science調べ)。

 贈賞式は9月21日、精密工学会の秋季大会が開かれている大阪大学豊中キャンパスで行われ、学会の青山藤詞郎会長から佐藤教授に賞が贈られました。佐藤教授は「機械材料としてのシリコン単結晶の物性と微細加工性」と題して受賞講演を行いました。

 佐藤教授は「MEMSという分野がまだ世の中に無い時代に精密工学会から技術賞をいただき、さらに今回、70歳を前にして学会賞で研究生活を飾ることができて、大いに感謝しています。私の研究は多くの若い共同研究者に支えられ、海外との交流によって強く育てられました。海外留学中に『己の研究の本質は何か』を説明する習慣がついたことは後年の研究生活に役立ちました。将来ある若い人には、早い時期に海外に出るチャンスをつかんでほしいです」と話しています。

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