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高い電気伝導性を持つ有機中性ラジカル結晶の合成と電子ドーピングに成功

2018.08.31 TOPICS

本学応用化学科の森田靖教授と村田剛志准教授らの研究グループが、新潟大学の古川貢 准教授との共同研究により、高い電気伝導性を持つ有機中性ラジカル結晶を合成し、さらに電子ドーピングによって電気伝導性を大幅に高める一般性高い手法の開発に成功しました。論文は8月30日午後7時(日本時間)、英国のSpringer Nature社が発行する総合科学雑誌「Nature」の姉妹誌である国際的な化学雑誌「Commnunications Chemistry」のオンライン版で公開されました。発表論文は以下のURLから無料でご覧いただけます(https://www.nature.com/commschem/)。

 研究グループは、精密有機合成化学と電子スピン化学を融合させた斬新な物質開拓を展開する中、中性ラジカルという特殊な電子状態にある有機分子が無限にπ型に積層した一次元集合体(π積層ラジカルポリマー)が良好な電気伝導経路を与えることを発見しました。さらに、結晶化の際に電子を部分的に注入(電子ドーピング)することで、電気伝導性を千倍~十万倍も向上させることに成功しました。

私たちの身の回りにあふれている有機物は、ほぼ例外無く電気を全く通さない「絶縁体」です。しかし、ごく一部の有機物は、固体中で分子同士を集めて電子状態をうまく制御すると銅やアルミニウムに匹敵する電気伝導性を示すことが知られています。

本研究では、一種類の有機分子のみで構成される高い電気伝導性有機結晶(固体)である「単成分純有機導電体」の具現化に成功し、一般性が高い設計指針を確立しました。また、この結晶へ電子を部分的に注入した混合原子価状態の有機結晶の合成にも成功し、さらに高い電気伝導性を実現しました。

この研究成果は、森田教授らが推進してきた奇数個の電子から成る有機中性ラジカルという特異な電子スピン状態を有する有機分子の精密有機合成化学を基盤としており、電子機能性材料の研究に新たな展開を創出する画期的なものです。森田教授らはすでに、この中性ラジカルをもとにした高性能リチウムイオン二次電池や近赤外光応答電気伝導体などのさまざまな顕著な機能を明らかにしており、さらなる研究展開も進めています。

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