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日本建築学会2018年度設計競技で、単独の研究室として全賞を受賞

2018.10.05 受賞・表彰

日本建築学会の2018年度設計競技は全国最終審査(公開)が9月4日に東北大学川内北キャンパスで行われ、本学建築学科「住・商空間デザイン研究室」(安井秀夫教授)から参加した6組が最優秀賞、優秀賞、佳作4点(併せて学部生対象のタジマ奨励賞を受賞)を受賞しました。全国各支部審査(応募282作品)と全国1次審査を通過してノミネートされた12組中、半数の6組が同研究室からの参加で、単独の研究室として前例のない全賞を獲得するという快挙を成し遂げました。

本年度の設計競技では「住宅に住む、そしてそこで稼ぐ」を課題に、住宅が経済活動に参加するためのアイデアを募りました。ニホンミツバチを媒体とした地域コミュニティの再生を提案し最優秀賞を受けた駒田浩基さんら4年生4人は「アドバイスをくれた研究室の仲間や先輩方、非常勤の先生の方々、的確な指導をしてくださった安井教授にとても感謝しています。審査会では思うようにプレゼンができなかったことや自分たちが悩んだところを審査員の方々にしっかり見抜かれていたりしたので、これらの反省点や経験を活かし、これから僕たちが取り組む卒業設計につなげていきたいです」と喜びを話しています。指導に当たる安井教授は「学会の古谷誠章会長から『東京以外の地方大学に奮起してほしいと審査会を公開し、その成果としてうれしい』と審査講評の挨拶でお言葉をいただきました。すべて最優秀賞を目標に努力してきた学生たちの成果です」と学生たちの取り組みを称えました。

受賞各作品の概要は次の通りです。

▽最優秀賞

「農蜂の住循環 ~ニホンミツバチを媒体とした地域コミュニティの再生~」

4年  駒田 浩基、岩﨑 秋太郎、崎原 利公、杉本 秀斗

人は古来より、自然と共存することで生活に豊かさを出し、四季の移ろいを感じてきた。しかし、現在は周囲を遮断し、四季の移ろいも暦の上でしか感じることができなくなっている。古来の生活をニホンミツバチを媒体とし、現代に再考することで人と生物と農業が循環しながら持続し、継続することで買う暮らしから作る暮らしへと変化する。四季の美しさ、生態系を稼ぎながら都市に四季の移ろいを映し出す新たな集合住宅の風景を創造する。

▽優秀賞

「SETAGAYA RURBAN APARTMENT -生産緑地利用による農村都市形成のケーススタディ-」

4年  松本 樹、平光 純子、横山 愛理、久保井 愛実

2022 年には、都市部において生産緑地の指定解除を受けた土地が大量の良質な宅地として市場に出回り、ディベロッパーにより収益性を重視した従来型のアパートや住宅が建てられ、市街地に大量供給される。そうして都市はアイデンティティを失い、プロトタイプが蔓延る無縁社会を生み出しているのである。都市における農地という希少価値を持つ生産緑地を失うことに問題意識を持ち、だからこそ生まれる建築のあり方を追求すべきではないか。本提案では、生産緑地の宅地化の影響を顕著に受ける東京都世田谷区にフォーカスを当て、生産緑地の既存制度を精査・活用することで生産緑地と一体型の賃貸住宅を生み出し、経済圏から切り離された住居地域に生産緑地を中心とした持続可能なコミュニティが展開される未来の風景を提示した。

▽佳作

「もったいない -持続可能な生活行動の集積による地域価値の向上-」

大学院2年  浅井 漱太、伊藤 啓人、見野 綾子

4年  川瀬 清賀

リサイクルを主体とした生活を送ることによって、消費による無駄な支出のない状態を作り出すことが実は「稼ぐ」ことに繋がっているというコンセプトのもと、大阪市の木造住宅密集地域において長屋、銭湯、商店街を軸にして持続可能な生活を展開するためのプログラムと建築操作を提案する。これらによってかつての閉ざされた住宅の環境から解き放たれ、地域共同体の一員としてそれぞれが意識をしながら生活していくことが可能となる。住民一人一人の持続可能な生活行動の積み重ねは、人々の繋がり、建築の価値、地域の価値の向上に結びつき、新たな地域の風景を生み出すであろう。

▽佳作

「未来を稼ぐ水庭 ~水路路地のある暮らし~」

   大学院1年  田口 愛、木村 優介、宮澤 優夫

現在のパッケージ化された住宅から失われた物は中間領域であると考え、それによって孤立化などの被害を受けたのは現代の子供たちであると考える。本提案では、用途地域制によってベッドタウン化され、孤立した住宅群に対して、現在では使われなくなり街の中を流れている水路空間を拡張し、中間領域として新たに街へと還元する提案である。街に広がる水路によって繋がった住宅たちは子供たちの未来を稼いでいく。

▽佳作

「建築再生計画 -保田窪団地をリノベーションする-」

4年    中村 勇太、鈴木 里菜、白木 美優、中城 裕太郎

設計者によって試行錯誤されてきた建築は、どれだけ計画が素晴らしくても、経済的理由によって簡単に社会の中から捨てられてしまう。このような理由だけで永久に存続することが約束されていない建築をこれまで通り取り壊していくのではなく、もう一度その建築の価値を読み直し、空間の配列とともに機能を落とし込む必要がある。空間を支えるための機能が介入することによって、初めて空間に力をもつことができ、自然と建築を必要とする人が増えていくと確信をする。使い手によって建築そのものの価値を生み出していくことができれば、社会貢献として国・地域・個人の利益を稼ぐことができる建築へと生まれ変わる。

▽佳作

「渡り漁業 -季節移住共同体の再考-」

4年  中家 優、奈良 結衣、七ツ村 希、打田 彩季枝

 敷地は、石川県舳倉島。かつては漁業で栄えた島であったが、漁業衰退と共に過疎化が進み、限界集落となっている。そのため、島の伝統である季節移住を再考し、住むと漁業の新しい在り方をつくる。また、島という環境を活かし、既存の島にあるもので島にないものをつくる。それらはやがて、島に適した住むと漁業という関係を構築し、島を再建していく。この、新規漁業者へのオープンな気質と、強すぎず弱すぎない関係は、海と共に島と生き、一時だけ賑わう、新たな島の住み方の提案である。

  • 最優秀賞、優秀賞、佳作を受賞した本学建築学科の学生たち
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