01 私はレスキューロボットをCREATEしています。
“誰でもどこでも運用しやすい”レスキューロボットの普及に向けて。
様々な危険が潜む災害現場において、人間に代わり負傷者の探索や周辺の状況調査を行うレスキューロボット。東日本大震災の発生以降、世界各地でその必要性が叫ばれ、大手やベンチャーなど、企業の規模を問わずに開発競争が進んでいます。
「ロボット」と聞くと、多くの人は人型を思い浮かべるかもしれませんが、私たちが研究しているレスキューロボットは、クローラーと呼ばれる、まるでショベルカーを思わせる駆動機構を搭載した車両型です。研究室では、ロボット本体はもちろん、ロボットを誰もが簡単に運用できるようにする制御システムや機構の開発にも取り組んでいます。その中でも私は、ロボットを地形に適応させるために重要な役割を果たすサブクローラーという駆動部の制御システムと、凹凸型の路面に対する走破性能の評価方法に関する研究をしています。
現在、扱っているレスキューロボットは「スコット3」という名前です。旧型の「スコット2」は、悪路を走行する際、乗り越えたい地形の高さに合わせてサブクローラーの上げ下げを操縦者がその都度行う必要がありました。そこで3では、操縦者の手間を省くべく、サブクローラーの自動化を目指すことに。結論から述べると、地形から受ける力を利用してサブクローラーが自然に動くような機構を考えました。デモ機を使った試験もなんとか及第点に到達したので、3の機体にも実装。もっと調整が必要ですが、悪路を走行する際でもロボットはスムーズに前進し、操縦者の負担も2に比べて軽減させることができました。
機体や制御システムの設計では、機械、電気、情報、数学など、日頃の授業で得た知識を総動員するので、「学びを活かすことができている」という喜びを感じられます。また、設計はもちろん、実装までの道のりは決して平坦ではありません。でもだからこそ、ロボットが狙い通りに動いてくれた時に味わう達成感は格別なのです。
現時点でのレスキューロボットは、まだ運用の難易度が高いという課題を抱えています。ですから、家庭用ロボット掃除機のように、“誰でもどこでも運用しやすい”機体に進化させることができれば、普及のスピードもきっと上がるはず。私たちの研究は、レスキューロボットの普及の鍵を握っていると思うので、今後後輩たちがよりよい成果を上げてくれることを望みます。
在学中は、研究室のメンバーと「ロボカップアジアパシフィック2021あいち」に出場して、3位に入賞することができました。
工学研究科 博士前期課程 機械工学専攻 2023年3月修了
三橋 知典さん
愛知県 愛知工業大学名電高等学校出身
02 私は地域資源を活用した人の居場所をCREATEしています。
空き家や空き店舗の活用を通して、実務者とともに行動。
自主性、責任感、課題解決力が身につきました。
近年、少子高齢化や人口減少を背景とした空き家や空き店舗の増加が注目を集め、社会的な問題として深刻化しつつあります。そこで私たちは、空き家・空き店舗の活用を通して地域が抱える課題を解決し、賑わいを創造する方法を模索しています。たとえば、空き店舗の活用については、学生が主体となったカフェの企画・運営や商店街にある空き旅館をリノベーションし、学生のシェアハウスとして活用しています。
その他にも数々のプロジェクトが進行中。日本建築学会設計競技をはじめ、各自治体が開催する数億~数十億円規模のまちづくりに関するコンペティションなどにも、実務家の方とともに参加し、より良いまちづくりに向けた取り組みに寄与。2022年は7作品応募し、上位にもランクインしています。この取り組みの特長は、さまざまな地域へ出向き、地域活性化やまちづくりに取り組む専門家とともに実務レベルで取り組めること。通常では接点ももてない専門家と1つのチームをつくり、地域を動かしていくダイナミックな活動ができます。自主的かつ積極的な行動、責任感も求められる厳しさもありますが、その分学びも大きいです。
このような活動を通して各地域の魅力を知っていくほど、地域の賑わいづくりに貢献したいという気持ちが強くなり、自然に自ら考え、行動する力が身についたと思います。自分たちの知らない知識も数多く吸収でき、さまざまな立場の方と関わることでコミュニケーション能力も向上したと実感。これらの経験を活かし、社会に出てからも課題解決のための新たな発想力を磨いていきたいと思います。
プロジェクトの内容を自身の研究や卒業設計のテーマとして取り上げることで、プロジェクトが完結しても継続して学び続けられるところもこの活動の良いところです。
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工学部 工学研究科 博士前期課程
建設システム工学専攻 2年
五十嵐 翔さん
愛知県 桜丘高等学校出身 -
工学部 工学研究科 博士前期課程
建設システム工学専攻 2年
五十嵐 友雅さん
愛知県立豊橋工科高等学校出身 -
工学部 工学研究科 博士前期課程
建設システム工学専攻 2年
永嶋 太一さん
愛知県立高蔵寺高等学校出身
03 私は電気エネルギー貯蔵デバイス用の新材料をCREATEしています。
カニやエビの殻の成分であるキチンから合成した多孔質炭素に電気を流し、そこに蓄えられる電気エネルギー量を測定する。これが私の研究活動です。多孔質炭素は、通常の炭素に比べて大量の分子やイオンを吸着させることが可能。この特徴は電気エネルギー貯蔵デバイスの機能アップに生かすことができると考えられています。つまり、私の研究では、キチン由来の多孔質炭素が電極材料として活用できるかどうか、その可能性を探っていることになるのです。
多孔質炭素の原料としてキチンが使われる例は少ないため、測定結果は世界で私だけが知る事実が多くなり、それがモチベーションの維持につながっています。今後は大学院に進みますが、キチン由来の多孔質炭素を使った電気エネルギー貯蔵デバイスが広く使われる将来を思い描きながら研究を続けます。
キチンのようなバイオマス原料を使った新材料によるものづくりこそが、持続可能な世界の創生に役立つと思っています。
工学部 応用化学科
応用化学専攻 2023年3月卒業
鈴木 勇人さん
愛知県立安城高等学校出身
04 私はデジタル技術で人々のワクワクをCREATEしています。
来館者の目に留まるデジタル展示。
企画の構想とプログラミングを担当。
所属する研究室では、愛知県犬山市にある野外民族博物館「リトルワールド」とのコラボ企画を実施。その内容は、フランスにある「ラスコーの洞窟」の壁画の画像を展示エリアの壁に投影するというものです。
私と企画に参加したメンバーは、壁画の画像の見せ方に工夫を加えることにしました。入念な検討ののち、壁に向かって照射したレーザーが、壁画の輪郭をなぞるように動き、その後徐々に壁画が投影されるような仕組みを構築することに決定。これは授業と研究活動で磨いたプログラミング技術によって実現できました。この見せ方は、来館者の目に留まりやすく、より興味を持って見ていただける結果となり、「コラボ企画を見に来るだけでもリトルワールドに足を運ぶ価値がある」との評価もいただけたので、手応えを感じることができました。
東京ゲームショウに出展するためのゲームも制作。デジタル技術によって人々が楽しむ姿をもっと見たいです。
情報科学部 情報科学科
メディア情報専攻 4年
米田 さやかさん
愛知県立刈谷北高等学校出身
01 私は自動車エンジンの新しいカタチをCREATEしています。
鍋のふたに、黒いつまみがついていますよね。鍋が熱くなってもあのつまみを持つことができるのは、熱を伝えにくい樹脂でできているからです。私たちの研究は、それと同じ原理を利用しています。追究しているテーマは、ガソリンエンジンの燃費向上。構成する部品の一部を樹脂に置き換えることで、熱エネルギーの損失を低減させることをめざしています。
その中で私は実際のエンジンを使った実験を担当しています。これまでの研究の結果、熱効率が本当に改善することはわかってきました。現在はより簡易な形状で効果を出すための研究に取り組んでいます。
エンジンは機械分野のイメージが強いと思いますが、燃料は化学の領域ですし、着火させるしくみは電気工学の領域。流体や熱力学も欠かせません。多くの分野にまたがる謎を解かなければ前進できないため、研究は困難の連続です。でもそれは、エンジンには進化させる余地がまだ大きく広がっていることも意味します。だからこの研究はやりがいがあるし、おもしろいですね。
幼稚園の頃、父親に連れられて行った富士スピードウェイでレースを観て「かっこいい!」と感動。以来、ずっとクルマ好きです。
工学研究科 博士前期課程 機械工学専攻 2年
河合 祐多さん
静岡県立浜松城北工業高等学校出身
河合君と同じテーマを追究しています。私の担当はシミュレーション解析。コンピュータを使って、エンジンの一部を樹脂部品に置き換えた場合の効果の推定を行っています。解析結果を基に「このような形状にしたら、より効果が高まるのでは」と河合君に提案することもあります。
私たちの研究は企業と共同で進めているため、自動車技術の最先端を学ばせてもらえる機会もあります。幼い頃からクルマ好きだったので、このような環境で学べることをとてもうれしく感じています。
自動車業界にはEV化の波が押し寄せていますが、世界各地域の気候や電力インフラの状況に合った動力源の選択肢として、エンジンはまだまだ必要です。私たちの研究成果が市場に出ている自動車にそのまま採用されるかどうかはわかりませんが、燃費改善への新たなアプローチを生み出すきっかけになると思います。チームで力を合わせて、より燃費改善効果を高める樹脂部品を追究し、CO2排出量の削減に少しでも貢献することが今の目標です。
AIT学生フォーミュラ研究会に入学時から所属。スポンサー企業や他大学生との交流も貴重な経験となりました。
工学研究科 博士前期課程 機械工学専攻 2年
髙田 宗一さん
石川県 星稜高等学校出身
02 私は古民家再生による地域活性化をCREATEしています。
完成後はもちろん、完成するまでの過程でも交流が生まれるおもしろさ。
少子高齢化や地方の過疎化に伴い、空き家・廃校の増加が社会問題となっています。私たちの研究室ではこれらの「建築ストック」を活用し、地域活性化につなげる研究に取り組んでいます。
その一環として、設楽町にある空き家となっていた築130年の古民家をDIYリノベーションし、交流の場とすることをテーマとした設計コンペに参加。70作品以上の応募があったそうで、残念ながら私たちの案は採用されませんでした。でも今、私たち研究室のメンバーは全員で交代しながらDIYに参加しています。今日は柱・梁に渋墨(しぶずみ)を塗る作業などを行いました。
「なぜ採用されなかったのに参加しているの?」と思われたのではないでしょうか。そこにはコンペを企画したオーナーさんの思いがあります。「地域外のできるだけ多くの人に、宿と設楽町に関わってもらうきっかけをつくりたい」という思いを込めて参加型DIYによるリノベーションを企画し、コンペ応募者をはじめ、全国に広く参加者を募っているのです。だから日によっては社会人や他大学の学生と共に汗を流すこともあります。完成後はもちろん、完成するまでの過程においても交流が生まれる場になっていることが、このプロジェクトのおもしろさです。
また、住宅を構成するさまざまな部材に直接触れることのできる経験は、とても貴重だと感じています。ハウスメーカーに就職するので、自らの目と手で得た学びを、社会でもぜひ活かしたいと考えています。
2019年に関東から設楽町に移住しました。古民家宿を通して、より多くの方に設楽町の魅力を伝えられたらと考えています。愛工大のみなさんは礼儀正しく、DIY作業も自ら積極的に取り組んでくれて、頼もしく感じています。
「古民家宿&バル てらわき」オーナー
とがみん夫婦(戸上 直哉さん 麻美さん)
卒業研究は、地元の三重県桑名市にある「まちづくり拠点施設」を研究対象に。「地域コミュニティの活性化に貢献したい」という思いで取り組みました
工学部 建築学科 建築学専攻
2022年3月卒業
伊藤 匠平さん
愛知県 愛知工業大学名電高等学校出身
03 私はドギーバッグの普及をCREATEしています。
「どうしたらもっと知ってもらえる?」の議論からYouTube動画制作がスタート。
ドギーバッグを知っていますか? レストランなどで食べ残した料理を持ち帰るための容器のことです。私たちの研究室では食品ロス削減をテーマにした研究に取り組んでいて、その一環でドギーバッグの普及活動も進めています。
まだまだ認知度が低いドギーバッグ。普及に向けてまずは人々が目や耳にする機会を増やすことが大切だと考え、私たちはYouTubeで公開する動画の制作を企画しました。世界各国の飲食店で料理を持ち帰るシーンを、私のつくった楽曲にのせて表現する、という内容です。海外に見える場所を国内で探しながら撮影しました。この動画を通じてドギーバッグ、さらには食品ロスに社会の注目がもっと集まることを期待しています。それは世界で飢餓に苦しむ人々を救うことにつながっていくと考えています。
音楽大学で作曲を学んだ経験もあります。動画制作では自分の得意分野と研究内容の融合を実現できました。
経営学部 経営学科
経営情報システム専攻 4年
清水 京輔さん
愛知県立岡崎北高等学校出身
04 私は最新技術による驚きと感動をCREATEしています。
天井まで届く巨大なパイプオルガンに映し出す、プロジェクションマッピング。豊田市コンサートホールで行われたオルガニストの徳岡めぐみさんと私たち「チームAI/メディア情報研究会」のコラボによる公演で、その制作を担当しました。
映像はシナリオの提供を受けてつくるのではなく、楽曲やイベントコンセプトを基に仲間たちとオリジナルのストーリーを考え、話し合いながら仕上げていきます。みんなで「見る人の心をいかに動かすか」を追求する過程はわくわくしますし、チームの絆が深まります。特に今回は、過去のチームAIの作品にはなかったフル3Dの表現に挑戦しました。0から1を生み出し、世の中に感動を与えるものづくり。その楽しさを味わえるのは、チームAIはもちろん、愛工大全体の特長でもあると実感しています。