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入倉孝次郎客員教授が日本地震学会賞を受賞

2022.10.31 受賞・表彰

 地域防災研究センターの入倉孝次郎客員教授が、「強震動予測手法の開発と展開」の業績により、2021年度日本地震学会賞を受賞しました。札幌市で開かれた同学会2022年度秋季大会(10月24~26日)の席上、授賞式があり、入倉教授が記念講演を行いました。

 入倉教授は、遠地の地震記録に基づく先行研究を踏まえ、震源スペクトルのスケーリング則と震源断層の相似則に基づいて、中小地震記録から大地震の強震記録の再現や予測を行う経験的グリーン関数法を提案しました。この方法は、近地強震記録に適用することで、広帯域における強震動の再現を可能にし、中小地震記録を将来起きる大地震の強震動予測に活用できる可能性を示唆するものでした。また、平成7年の兵庫県南部地震で生じた「震災の帯」の原因となった強震動パルス波が、地下の震源断層の運動と不整形地盤による地震動の増幅的干渉効果によって生じたものであったことを、観測事実とモデルシミュレーションにより明らかにしました。

 その後、断層面積や平均滑り量といった巨視的断層パラメータのみならず、滑り分布の不均質のような微視的断層パラメータも強震動生成に重要な役割を果たすことに着目しました。新たに既往の大地震について、不均質震源断層モデルの統計解析による滑りの大きい領域のスケーリング則を精査し、滑りの大きい領域と震源断層面上で強い揺れを生じる領域の対応といった、強震動に関わる震源物理の研究成果を統合した「特性化震源断層モデル」の構築方法を提案しました。

 一連の強震動予測手法をまとめた「強震動予測レシピ」は、政府地震調査研究推進本部の全国地震動予測地図の根幹を成し、地震災害の軽減を目的とした地震動分布推定や地震被害想定に必要な強震動予測に広く用いられています。また海外でも、日本発の強震動予測手法として認知され、利用されています。

 入倉教授は、強震動地震学の研究を永年牽引し、地震学の発展に寄与しました。国内外の次世代地震研究を担う多くの人材を育成するとともに、地震防災に関する著書の執筆や各種委員会での活動を通じて、社会の地震災害軽減に尽力してきました。現在もなお、地震学会をはじめとする国内、国際学術集会などで精力的に研究発表を行っています。

  • 日本地震学会賞を受賞した入倉孝次郎客員教授(右)
  • 受賞記念講演
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