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日本設備管理学会東海支部の学生研究発表会で知識マイニング研究室の3学生が受賞

2023.03.14 受賞・表彰

 2月24日に開催された日本設備管理学会東海支部の令和4年度学生研究発表会で、経営学科の知識マイニング研究室(野中尋史准教授)に所属する石川治樹さん(3年)が最優秀研究奨励賞を受賞しました。また、これに次ぐ支部長賞を同研究室の玉置隼佑さん(3年)と伊豫田彬さん(3年)が受賞しました。

学生3人が取り組んでいる研究の概要と、受賞に寄せたコメントは以下の通りです。

▽最優秀研究奨励賞
◎石川治樹「Sentence BERTを用いた特許文書間の類似度算出」
■研究概要
企業の事業戦略において、特許出願のトレンド分析をすることは有用です。このためパテントマップと呼ばれる特許の出願動向を可視化したツールが広く利用されています。中でも特許文書の意味に着目をしたものは、技術内容のトレンドを分析することができるためニーズが高いです。しかしながら手動での作成は人的・経済的コストを要するため、自動化手法が求められていました。自動化の際に重要となるのは類似した特許をどのようにまとめあげるのかという点です。本研究では、単語の意味理解モデルとして着目されているAI(ディープラーニング)モデルであるBERTをベースに、文書間の類似度を算出できるよう拡張したSentence BERTを利用することで、情報量を落とさず同義語の問題にも対応して特許文の意味的なまとめあげを行う手法を提案しました。これにより技術的類似度の高い文を自動でまとめあげることが可能となりました。
■受賞コメント
研究で苦労した点は、Sentence BERTの出力結果に基づいて実際に文同士の類似度をまとめあげた結果を定量的に表示する類似度行列作成と呼ばれる部分の開発です。文同士の計算が求まらないことや、異なる文での計算をしてしまうことがあり、試行錯誤しました。この苦労を克服して、基礎的であるとはいえ手法を作り上げることができたのは自信になりました。今後の研究では、質疑応答の際に先生や企業の方々からいただいたアドバイスである「特許文書の図面」にも着目して、文と図面の関係性から特許文書の類似性を探っていきたいと思います。

▽支部長賞
◎玉置隼佑「Yolo-Strongsortを用いた人流の算出」
■研究概要
人流データとは人の流れを定量化したもので、マーケティングから防災までさまざまな場面で活躍しています。たとえば、施設内レイアウトの改善や防災時の避難ルートの選定などがあります。今後も人流データはさらに注目を集めていくことが考えられます。人流データを作成するためには、画像中に人がどれだけいるか等を解析する必要があります。そのために動画データから自動で人の動きを解析する深層学習(ディープラーニング=AIの主流モデル)のモデルYolo-Strongsortが幅広く利用されています。しかし、Yolo-Strongsortは個別の人の動きを追いかけることは可能ですが,実応用で重要となる大まかな人流の方向の特定と店舗の出入りの特定は難しい課題を抱えていました。そこで本研究では、機械学習の一つであるSVM(サポートベクトルマシン)とYolo-Strongsortを組み合わせて人流の方向や特定の店舗への人の出入りを推定できる手法を提案しました。評価実験の結果、指標のF値は0.82と良好な数値を示しました。この手法により、幅広い分野で実用的な人流の調査をすることが可能になると期待しています。
■受賞コメント
今回の研究で、実用的な人流解析の基礎モデルの開発ができたと考えています。しかしながら、実用化のためにはまだ改善の余地があると考えています。今後はエラー要因の一つである複雑な人の動きにも対応できるようにしたいと思っています。本研究が実用化された暁には、特定の店舗に出入りしている人のターゲット層の特定や、より精度の高い施設内レイアウトが可能になるなど、詳細なマーケティングが可能となります。実用化を目指して今後も頑張っていきたいと思います。

◎伊豫田彬「BERTを用いた企業不祥事記事からの法人名抽出」
■研究概要
現在、反マネーロンダリング(AML)や反テロ資金提供(CFT)の対策が必要とされており、そのため顧客の犯罪情報の正確性がますます重視されています。eKYC(オンラインで行う本人確認)で使用される顧客情報を自動で作成する方法は、現在、著者らが知る限りでは存在していません。本研究では、顧客情報の特に犯罪に関連した法人名の自動抽出が目的です。具体的には、ニュース記事から自動で抽出された記事に基づいて自然言語処理が得意な深層学習のモデルであるBERTを使用した固有表現抽出を行い、法人名を抽出するモデルの開発を行いました。評価実験の結果、性能を示すF値は0.74と改善の余地はあるものの、基礎モデルとしては良好な結果を示すことができました。
■受賞コメント
AI本体の開発よりも、AIに教え込ませるためのデータセットの手動での作成と改善を行うためのエラー分析に苦労しました。周りのサポートもあり、苦労を克服して研究成果を発表し賞をいただけて本当にうれしいです。今後は事前学習済みモデルの変更や教師データを増やすなどして改善を行い、実用的なeKYCコンテンツ作成技術の確立につなげたいと思います。

  • 「Sentence BERTを用いた特許文書間の類似度算出」
  • 石川治樹さん
  • 「Yolo-Strongsortを用いた人流の算出」
  • 玉置隼佑さん
  • 「BERTを用いた企業不祥事記事からの法人名抽出」
  • 伊豫田彬さん
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