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中村豪教授が2018日本数学会秋季総合分科会で特別講演

2018.10.01 TOPICS
  • 中村豪教授(2018日本数学会秋季総合分科会会場で)

9月24~27日に岡山大学津島キャンパスで開かれた2018日本数学会秋季総合分科会で、本学基礎教育センター自然科学教室の中村豪教授が「極値的円板を許容する閉リーマン面」と題して特別講演を行いました。

 テーマ「函数論」の中で約1時間にわたって行われた中村教授の講演は、極値的リーマン面の性質について得られた結果を紹介しました。

 リーマン面とは、大まかには曲面のことで、局所的に複素1次元の座標が入り、座標変換の関数が正則関数(複素変数で微分ができる関数)になるもののことです。特に今回は双曲的で閉じたリーマン面を考えています。

ここでいうリーマン面の極値性については、まず、各閉リーマン面には埋め込むことのできる最大半径の双曲円板があります。同じ種数を持つ閉リーマン面の等角同値類全体の集合(これをモジュライ空間といいます)において、それぞれから生じる最大半径の中から最大値が定まります。この最大値を半径とする双曲円板を埋め込むことのできる閉リーマン面を極値的と呼びます。なお、種数とは曲面に付いているハンドルの個数のことです(例えばドーナツならば種数1、2人用の浮き輪ならば種数2です)。講演では極値的リーマン面のうち、対称的なもの、超楕円的なものの構成法を紹介しました。また、向き付け不可能な閉クライン面に対しても極値性は同様に定義でき、極値的クライン面の複素ダブルと極値的リーマン面との関係を示しました。この他に、種数2のときにモジュライ空間を被覆しているより大きな空間であるタイヒミュラー空間のモデルを実7次元空間内に構成し、3種類の写像類による極値的リーマン面の軌道を求めました。この空間に距離を導入し、双曲正8角形から得られる標準的な閉リーマン面とこの軌道の距離を計算することができました。

特別講演を終えて、中村教授は「今後の広がりを感じ取ってもらえればと思い、内容を盛り込み過ぎたかもしれません。写像類群の作用についてはまだ考察しなければならないことが多くあり、この先も継続して研究していきたいと思います」と感想を述べています。

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