新しい未来の創造が、もう始まっている。
愛知工業大学はSDGs達成に向けて、科学技術と社会科学によるイノベーションに取り組み、より良い社会づくりに貢献していきます。
「こんなことができたら、誰かを救えるのではないか?」「これが実現したなら、環境問題の解決への大きな一歩になるのではないか?」
さまざまな課題を乗り越える第一歩となるこうした夢を「AIT Social Dreams.」と定義し、
若者のもつ柔軟な発想と思考を何よりも尊重し、それを実現するための知識や技術を共に開拓していきます。
この特集ではSDGsに関連する4つの研究例を紹介します。
SDGsとは
SDGsとは、国連加盟193カ国が2030年までの達成をめざす「持続可能な開発目標」です。17のゴール・169のターゲットから構成され、2015年9月に国連サミットで採択されて以来、さまざまな企業や行政、NPO、NGOが数多くの取り組みを推進しています。SDGsに掲げられるさまざまな課題を解決するためには、あらゆる領域においてイノベーションが重要な鍵を握っています。
各学科における特に貢献可能なSDGsの目標
01 私は歩行補助ロボットをCREATEしています。
下肢麻痺になってしまった人の願いを、歩行補助ロボットでかなえたい。
歩行補助ロボットの製作に取り組むことになったのは、脚が不自由な祖父の存在。歩行するのが困難な様子を見て、何とかできないかと思ったのがきっかけでした。大学生になって、その思いはますます強くなりました。それはスーパーマーケットのアルバイトをしているとき、お客さんとして来てくれる高齢者の方々が、祖父同様に歩くことに苦労している姿を多数見てきたからです。そんな思いもあって香川先生の研究室に入り、先輩から受け継いだ歩行補助ロボットの研究に取り組みました。
僕たちは機体を動作させたときの変形量を少なくするため、モーションキャプチャを用いて変形量を数値化し、定量的に評価しました。変形量を少なくするためには強度の高い素材を使用したり、厚みを増やせば良いのですが、それだと機体の重さが増えてしまいます。軽量化しつつ、人間の重さに耐えられる機構にすることがこの研究のおもしろいところです。また、人間が歩くときは片足に体重をかけて交互に脚を動かすため、片足立ちになってもバランスを崩さないことがポイントになります。そのため9個のモーターを制御し、片足立ちでも安定するようにテストしています。脊髄損傷などによって下肢麻痺になってしまった方は自身で歩くことができません。そういった方が歩行補助ロボットを使用することで、日常生活を支援できると考えています。近年、日本では毎年5,000人ほどの割合で脊髄損傷の方が増えています。現状の移動手段には車いすが使用されますが、車いすでは段差や不整地での使用が困難です。また、患者さんからは「自身の脚で立って歩きたい」という声もあります。そういった方たちの願いを、この研究でかなえられたらと思っています。
安定した片足立ちを見せた歩行補助ロボットを見て、うれしそうな顔をした香川先生の顔が、いまでも忘れられません!
工学部 機械学科 機械工学専攻 2024年3月卒業
黒木 章吾さん
愛知県立岩倉総合高等学校出身
02 私はフードロス削減レシピをCREATEしています。
消費期限が過ぎたら捨てられがちな「災害用備蓄食品」。
食べるのが楽しみになるようなアレンジレシピを開発。
私たちは、自由ヶ丘キャンパスでクッキングを中心としたCommunity Circle『Hill’s』を運営しています。サークルの食品ロス削減チームでは、大学の学生チャレンジプロジェクトからの支援を受け、災害用備蓄食品をアレンジして、手軽においしく食べられるようなレシピを考案。「フードロス削減レシピ」を開発しています。たとえばアルファ米をドリアにしたり、缶入りのパンをティラミスにしたり。備蓄食品特有の風味や匂いを、家庭にある材料を使ってカバーし、おいしくアレンジしています。豊田市環境部循環型社会推進課と豊田市農業集団「夢農人とよた」にお話をいただき、賞味期限切れ間近の災害用備蓄食品や、市場に出回らない規格外の農作物を使って、アレンジレシピができないかと考えたことが始まりでした。メンバー全員が災害用備蓄食品を持ち帰って試作。その後、サークル活動日にみんなで調理して試食すると、「アイデアを持ち寄るとこんなにおいしくなるんだ!」と驚きました。選んだメニューは、分量を計算して試作を重ね、写真を撮って、「災害用備蓄食品アレンジレシピ」というレシピ本にまとめました。 昨年は「おいでん市場」でのイベントで実際にアレンジレシピを料理して振る舞ったほか、「SDGs Aichi Expo」で活動についてブース展示を行い、来場した人にレシピ本を配布。「作ってみたい」といった反応にやりがいを感じました。そして全124ブースの中から、来場者の「印象に残ったブーストップ10」の7位に選出され、大村秀章愛知県知事にも「いいね!」と言っていただけました。自然災害が多く発生している昨今、災害用備蓄食品の備えは欠かせません。それを「期限が過ぎたら捨てる」という意識から、「幸い何も起こらず消費期限や賞味期限が近づいた時に、アレンジして食べる楽しみ」に変えることができたら。またこれは、災害用備蓄食品に慣れておくためのステップにもなると思います。今後も活動の幅を広げ、人と人とのコミュニティをつないでいくようなサークルでありたいと思います。
経営学部 経営学科 経営情報システム専攻
- 1.安藤 七哉さん(3年)
愛知県 杜若高等学校出身 - 2.市原 颯さん(3年)
三重県立桑名工業高等学校出身 - 3.城殿 惇之さん(3年)
愛知県立岡崎西高等学校出身
- 4.松原 友輔さん(3年)
愛知県 東邦高等学校出身 - 5.安達 智希さん(3年)
愛知県 中部大学第一高等学校出身 - 6.櫛田 瑞希さん(2年)
愛知県立春日井西高等学校出身
Community Circle 『Hill’s』(2024年度部長・安藤七哉さん)は隔週月曜日の授業後、キャンパス1階にある自由ヶ丘食堂で活動しています。屋上菜園で育てた野菜を収穫して料理に使うことも。
03 私は超音波による皮膚への触感刺激をCREATEしています。
人に力や振動を与えることで、皮膚に「触れている感覚」をフィードバックする技術「ハプティクス」を研究しています。たとえばこの技術で、遠隔操作による手術や触診といった遠隔医療を受けられるようになるかもしれません。中でも私が所属する研究室では、超音波を使って、非接触で「触れている感覚」を起こす研究をしています。超音波スピーカーに信号を流すための装置を制作し、焦点を調整して触覚をフィードバックします。これは、ほかの大学や研究室がほぼ取り組んでいない分野です。だから、オープンソースの電子工作プラットフォームを使って「ラテラル変調」を実現し、装置の小型化に成功したことが日本初となり、大きなモチベーションにつながりました。今後は大学院に進学し、装置のさらなる小型化と、触感を強めることを目標に研究を続けます。この技術を遠隔医療や遠隔ロボット操作に応用し、被災地や離島などの医療に貢献できたらと考えています。
機器の回路設計やCADを使った治具作成、プログラミングなど、ハードとソフトを手がけられるところがこの研究の魅力です
工学部 電気学科 電子情報工学専攻 2024年3月卒業
中村 美深さん
愛知県立名古屋南高等学校出身
04 私は少し違ったスマホの使い方をCREATEしています。
学部生の頃からスマホを使った研究を続けていますが、それとは別に、普段から「何かおもしろいアイデアはないか」と考えて、形にしています。その一つが、スマホを水に沈めて遊ぶアプリです。防水機能があるスマホはお風呂などに30分以上沈めても壊れません。また、スマホには気圧センサが搭載されていて、水に沈めると水圧が測定でき、指で押すと端末内部の空気圧が変わります。それらを活用して、魚の掴み取りゲームアプリ「沈めて掴む」を開発しました。ほかに、スマホを口にくわえて走るマッチングアプリ「令和の食パンダッシュ」なども考案しました。たとえば、水が苦手な子どもが「沈めて掴む」のアプリを使って水に慣れたり、握力の弱い人が鍛えられたりと、楽しく遊んでいるうちに良い習慣が身につき、課題が改善されるとしたらうれしいです。いつか、水中にスマホを持っていくのが当たり前の時代がきたら、僕の研究が役に立つかもしれませんね。