令和8年4月28日(火)、豊田市役所において「大学・高専発研究提案」の最終報告会が開催され、経営学部経営学科の加藤里美特命教授が、「外国人住民の声を活かす防災の入口づくり ~外国人住民の行動実態の把握と防災リーダー育成の第一歩~」と題して研究成果を発表しました。
本研究は、本学と包括連携協定を締結している豊田市の「大学・高専発研究提案」に令和7年度に採択されたものです。豊田市に暮らす外国人住民の防災行動の実態を把握するとともに、防災活動への参加のきっかけづくりを目的として取り組まれました。
防災を「自分ごと」として捉える体験型ワークショップを開催
令和7年12月13日(土)、豊田市多様性社会共創課との共同により、豊田市産業文化会館にて体験型防災ワークショップを開催しました。ブラジル、ベトナム、フィリピン、インドネシア、中国の5か国から外国人住民13名が参加し、愛知工業大学地域防災センター「学防ラボ」、経営学科「SDGs推進チーム」、日本赤十字豊田看護大学「サークルThe Serendipity」の日本人学生9名とともに、グループでの自己紹介、母国の災害経験の共有、非常食の試食、新聞紙スリッパ作り、津波ゲームなど、体験しながら学ぶプログラムを実施しました。参加後のアンケートでは、回答者の81.3%が「とてもよかった」と回答しました。また、回答者全員が「新しく知ったことがあった」と答え、93.8%が「防災についてもっと知りたいと思った」と回答するなど、防災への関心の高まりが見られました。ワークショップを通じて、日本人学生たちは、「暖かい」と「温かい」のような同音異義語が外国人住民に伝わりにくい場面を実体験し、やさしい日本語の重要性を改めて認識する機会となりました。また、日本人学生が参加することで、外国人住民同士のつながりの形成にも一定の効果がうかがえました。
質問紙調査から見えてきた課題
本研究では、豊田市が実施した既存調査に追加項目を設ける形で、ブラジル、ベトナム、中国、フィリピン、インドネシアの5か国籍を中心とする約190名を対象に、防災意識、行動、情報環境に関する質問紙調査も実施しました。調査では、回答者190名のうち40名が自分の指定避難所の場所を知らないこと、また、地域の防災訓練に参加したことがない人が187名中107名にのぼることが報告されました。参加しない主な理由としては、「訓練の案内を知らない」「言葉の壁が心配」などが挙げられました。さらに、災害時に最初に相談する相手として最も多かったのは「会社」であり、企業が外国人住民にとって災害時の相談先の一つとして位置づけられていることが示されました。また、日本語能力が高く、在留年数が長い場合でも、指定避難所の認知が十分でないケースがあることも報告され、情報提供の充実だけでなく、実際の避難行動につなげる支援の重要性について説明しました。
多文化共生型の防災へ向けて
加藤特命教授は、調査結果を踏まえ、今後の方向性として「多文化共生型の防災」の推進を挙げました。具体的には、情報提供にとどまらず、実際の避難行動につなげる支援や、地域でのつながりづくりが重要であると報告しました。また、企業との連携、やさしい日本語の活用、視覚的にわかりやすい情報提供、SNSの媒体特性に応じた発信、就労形態を踏まえた支援などを組み合わせる必要性についても説明しました。さらに、外国人住民を支援の対象としてのみ捉えるのではなく、防災活動の企画段階から参加してもらうことが、地域における防災の担い手づくりにつながる可能性があると述べました。最終報告会では、豊田市多様性社会共創課の吉野課長からも、「外国人住民を単なる対象ではなく、自ら企画段階から参加していただき、地域の中でつながりをつくりながら活動していくことが重要だと感じた。今後も一緒に共同で進めていきたい」との言葉が寄せられました。本学は今後も、地域に根ざした大学として、豊田市をはじめとする地域社会との連携を深め、多文化共生の実現とSDGsの推進に向けた取り組みを続けてまいります。
参考:外国籍市民を対象とした体験型防災ワークショップ
参考:豊田市ホームページ 大学・高専発研究提案